TSN(Time Sensitive Networking)は、
Ethernetを拡張することで通信にリアルタイム性を持たせる技術です。生産現場の機械や装置をつなぐネットワークのオープン化を後押しするものとして位置付けられています。
スマートファクトリーの典型的なイメージの一つに、
IoTで生産現場から取得したデータを活用して、生産現場を最適に制御するモデルがあります。熟練技術者の勘と経験だけに頼るようなことなく、データに基づいたものづくりが可能になりますが、これを実現するためには、データ収集とともに、ITシステムで分析して生産現場の機械や装置に送るネットワークが必要になります。
しかしITのネットワークで事実上の標準であるEthernetは、リアルタイム性に欠けるという弱点があり、機械や装置の制御にはそのままでは使えません。制御とITで計2本のネットワークを敷設するのも非現実的なため、Ethernetの活用は限定的にならざるを得ない。
TSNはそのEthernetの弱点を補うものとして開発された技術です。国際標準化団体のIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)で標準化作業が行われています。ネットワークに接続したデバイス同士が時刻を同期する方式(IEEE802.1AS)、時分割により異なるプロトコルをサイクリック通信で流す方式(IEEE802.1Qbv)など、複数の規格で構成しています。
TSNにより生産現場で重要なリアルタイム性をEthernetで確保できるようになることで、スイッチなど標準的なEthernet機器やアプリケーションも含め、従来は生産現場のネットワークに接続して使うことが困難だった機器を、全部つなぐことが容易になります。製造業での精度の高いデータ活用と、それによるスマートファクトリー実現が進むものと期待されています。