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  • 公開日時 : 2021/06/28 11:48
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アモルファス

アモルファス
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アモルファスとは、物質が結晶構造を持たない状態を意味する言葉です。通常、自然界に存在する鉱物や金属などの物質は、原子が規則性を持って並んだ結晶の形をしていますが、金属や合金は熱を加えて液体にするとその配列は崩れてしまいます。アモルファスはその崩れた非晶質の状態を指しており、そうした構造を持つ代表的な素材にガラスやゴムなどがあります。
 
アモルファス構造を持つ金属、いわゆるアモルファス金属は、原子の配列が不規則なため外からの力に強く、強靱性に優れています。また腐食が始まりやすい結晶の境目がないため耐食性(耐腐食性)に優れているほか、軟磁性などの特徴も持っています。主なアモルファス金属には、高強度材料のFe-Si-B、高耐食材料のFe-Cr-P-Cなどがあります。またアモルファス金属の一種である金属ガラスは、高い強度を持ちながらも変形しやすく、金型に流し込むとその形を精密に再現できるため、高い寸法精度が求められるものづくりに適しています。
 
アモルファス金属の製造方法の一つは、液体にしてアモルファスにした金属を急速に冷却する液体急冷法です。通常の冷却では固体になる前に結晶に変わってしまいますが、急冷の技術が確立したことで、変わる前に固体にすることが可能になりました。その他の製造方法には真空蒸着による気相凍結法などがあります。
 
アモルファス金属の主な用途には、アモルファスシリコン(アモルファス半導体)を使って薄型化した太陽電池や、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などに代表される高強度のカーボン素材のアモルファスカーボンなどがあります。また金属と酸素の原子をアモルファスにしたアモルファス金属酸化物は、半導体の絶縁膜などに使われています。
 
産業分野でアモルファス金属が特に期待されているのは変圧器です。変圧器でコイルを巻く鉄心には、従来は結晶構造を持つ珪素鋼板が使われていましたが、そこにアモルファス合金を使ったアモルファス変圧器が登場しています。常時稼働し続ける変圧器は、稼働中だけでなく待機時の消費電力をできるだけ低減することが重要です。アモルファス変圧器はその待機時の消費電力、いわゆる無負荷損を抑えることができるため、省エネに大きく貢献します。
 
三菱電機はこのアモルファス変圧器について、油入変圧器モールド変圧器の2製品をラインナップしています。アモルファス合金の採用による無負荷損低減に加え、巻線や内部構造の設計最適化を行うことで、第二次トップランナー基準に対する省エネ基準達成率で約140%を実現しています。
 
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