AGV(無人搬送車、Automatic Guided Vehicle)は、人による操作を必要としない自動の搬送車です。物流業のほか、製造業では工場や倉庫の中でワークの搬送を自動化するマテハン機器として使われています。その他の業界でも、病院では機材や病室への食事の搬送、飲食業では配膳作業などで活用が始まっています。屋内だけでなく、屋外で使われているAGVもあります。
AGVは車両の上にある台座に搬送物を載せて移動します。一般的なAGVは台車ほどの大きさですが、大きく重いものの搬送に適した平ボディ状の重量級型AGV、台座の上にコンベアも作り付けて搬送だけでなく搬入出も自動化したAGV、搬送物の下にもぐり込み抱え上げて搬送する低床型AGV、台座は持たず搬送物を載せた台車を引っ張る牽引型のAGVや、フォークリフト一体型でパレット搬送に適したAGVなどもあります。
無人で走行するAGVには走路を教え込む必要があります。その方式にはいくつかありますが、現在最も使われているのが磁気誘導式というものです。走行する床面に磁気テープなどで走路を構成し、AGVはその磁気をセンサで読み取り、走行すべきルートを検出する仕組みです。走路を作る方式には他にも、床面に配した電線で発生する磁界を使って誘導する電磁誘導式や、床や天井に配置した二次元バーコードなどの画像をAGVが読み取って位置を認識する画像認識方式、AGVがレーザーを照射し反射させることで自らの位置を認識するレーザー誘導式などがあります。レーザー誘導式は走路の周りに配置した反射板でレーザーを反射させるため、反射板誘導式とも呼ばれます。
しかしいずれの方式も、あらかじめ走路など現場の環境を整える必要があるため、AGVは決められたところしか走ることができません。AGVが自ら走路を判断して動く自律走行が期待されており、実際にそれが可能なガイドレスAGVも登場しています。その代表的なものがSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)方式のAGVです。カメラやレーザーレーダ(ライダー)、ジャイロセンサなどを使って、自身の周囲の環境を認識して適切な判断と走行を行います。SLAM方式によるAGVの自律走行には
AIも活用されるようになり、ロボットに近い存在になってきたことからAMR(Autonomous Mobile Robot)とも呼ばれています。
AGVは搬送作業を無人化するため、人手不足という課題の解決に効果を発揮します。また搬送先を間違えるようなことがなく、人手では欠かせないチェック作業などの負担削減が期待できます。現場の人員削減を補えるため、コスト削減にも効果があります。搬送は日々繰り返される作業のため、導入コストの回収がしやすく、費用対効果が高いのも特徴です。
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