Factory Automation

情熱ボイス

【先端技術総合研究所篇】 ― オートメーションで変えていく未来を可視化する人たち

2024年3月公開【全2回】

第1回 「完全」自動運転の現在地 - 自動運転技術

長い間、世界の関心を集めている自動運転技術は、現在、一歩ずつ、完全自動運転の実現に向けて歩みを進めています。公道でのテスト走行はすでに始まり、自動運転の進化により、社会が享受するメリットの大きさも公に認知されはじめました。EVやカーシェアリングと合わせて、自動運転は、交通事故数と死亡者数の減少、交通渋滞の緩和、輸送コストの削減、またCO2排出量の大幅削減を実現し、よりクリーンで環境に配慮した世界を生み出す技術となるでしょう。

私たちの想像以上に、自動運転の技術は進んでいる。

私たちの想像以上に、自動運転の技術は進んでいる。

車の制御を車に任せるという発想は、多くの人々に安全上の懸念を感じさせるかもしれません。しかし、実際は、自動運転技術によって交通安全が大幅に改善されることが証明されています。先端技術総合研究所の開発チームが述べているように、自動運転初期の関心事は常に人の安全が確保できるかどうか、でした。

現在、その懸念の大部分は取り除かれており、チームの研究テーマには快適さと効率性の追求があがるようになっています。完全自動運転の実現はそれほど遠くないという事実は私たちをわくわくさせます。例えば、2025年から2030年には、自動運転バスが路上を走っていることが予想されています。この事からもテクノロジーが現在どの地点にあるのかを知ることができます。

酒井 雅也 工学博士 ロボティクス技術部自律移動制御グループ マネージャー

酒井 雅也 工学博士
ロボティクス技術部自律移動制御グループ マネージャー

「経路生成技術も車両制御技術も、すでに高速道路などの単純な環境に適用できるレベルにある一方で、周囲を認識するセンシング機能や判断技術の確立にはまだ改善の予知があります。」
酒井 雅也 工学博士 自律移動制御グループマネージャー

亀岡 翔太 ロボティクス技術部自律移動制御グループ研究員

亀岡 翔太
ロボティクス技術部自律移動制御グループ研究員

富永 健太 工学博士 ロボティクス技術部自律移動制御グループ研究員

富永 健太 工学博士
ロボティクス技術部自律移動制御グループ研究員

5つのレベルの自律性

「自動運転」をどのように定義すればよいのでしょうか? 「SAE International」は自動運転技術と運転支援技術を区別して、5つのレベルの自律性を定義しています。

運転支援技術(レベル1 および2)は、運転を支援しますが、依然として人間が車両を操作する必要があります。完全自動運転は究極の姿かもしれませんが、自動緊急ブレーキ、車線変更センサー、アダプティブ・クルーズ・コントロールなどの機能は現在私たちが運転している車の多くが、ある程度自動運転されていることを思い出させてくれます。

自動運転技術(レベル3~5)は、車両が運転に介入し、車両が載せる人間と無関係に運転の決定を下せるようにするAIシステムを指します。レベル3の自動車は、すべての安全上重要な機能を指揮し、特定の状況では運転を引き継いで、ドライバーに制御を取り戻すよう警告します。レベル4は、完全な自律性への重要なステップです。レベル5は完全に自動運転され、いつでもどのようなシナリオでも自動運転できる車を表します。これが完全自動化です。人間が運転しなければ、理論的には、これらの車にはハンドルやペダルは必要ありません。

レベル4とレベル5では、センサーが車両周辺の詳細で動的なマップを作成します。センサーが白線、周囲の車両、歩行者、障害物などを認識し、適切な走行経路を決定します。先端総合研究所の自律移動制御グループは、車載システムが安全運転に貢献するあらゆる人的要因を考慮に入れた技術を日々研究しています。

完全自動運転車では、ミリ波レーダーやカメラ、ライダーなどの複数のセンサーを用いて、道路の境界線、標識、信号などの走行環境と、周辺車両や歩行者などの交通参加者を認識します。車載ソフトウェアシステムは、このすべてのデータを処理し、自動車のアクチュエータにステアリング、ブレーキ、加速を指示します。

自動運転を人の運転に近づける - ロボティクス技術部

先端技術総合研究所ロボティクス技術部で酒井マネージャーとチームを組む亀岡研究員と富永研究員に、車両の自動運転を次の段階に進めるための取り組みについて詳しく説明してもらいました。

「ドライバーとして、私たちは車内で安全であるということは、単に障害物を回避すること以上のものだと考えています。車を運転しているとき、人は無意識のうちにさまざまのことを考慮に入れています。たとえば、車両とその周辺状況、天候、車両速度、ステアリング角度などに関する情報などです。私たちが開発している車載技術がこれら要因をすべて考慮しなければならないのです。」

「自動運転を人間の運転に近づけるために、私たちは経路生成技術を開発しました。パーティクルフィルタを用いた経路生成は、路面状況や車両の運動特性を考慮できるという利点があります。人が車を運転するとき、進むべきルートを決定するのは障害物の存在だけではありません。」

経路生成とは、車両がどの経路を通るかを決定するのに役立つすべての要素を指します。パーティクルフィルタによる経路生成とRRT(Rapid-exploring Random Tree)による経路探索2つの方法で構成されます。

パーティクルフィルタにより、システムは路面の状態や車両の運動特性などの要因を考慮することができます。この技術は、確率分布を利用して、仮想空間内のオブジェクトの周囲に粒子を散乱させることにより、データの変化を予測します。オブジェクトが移動すると、これらの粒子の分布が変化し、これらの変化を分析して最適な経路を決定します。

「車載マイコンの性能向上により、パーティクルフィルタを用いた車両の状態推定が可能になりました。」と亀岡研究員は付け加えます。「パーティクルフィルタを用いて、車が車線中央などの目標状態に近づくための理想的な位置変化を推定し、経路を生成します。」

RRTテクノロジーは、パーティクルフィルタによって作成された走行ルートを取得して最適なルートを選択し、ツリーに展開します。 RRTは500ミリ秒ごとに再計算してツリーの中で最適な経路を決定するため、急ハンドルや急減速を回避するスムーズなハンドリングで乗客の快適性を確保できます。

課題解決から生まれた新車両制御技術

画期的な技術は特定の問題を克服する努力から生まれます。彼らが克服しなければならなかった問題の1つが、車両運動は縦運動と横運動が連成していることやタイヤグリップ力に強い非線形性があることにより、必ずしも車両が目標経路を完全に追随できているわけではない、ということでした。

チームは、車載マイコンで高度な演算処理が可能な効率的なアルゴリズムの開発や、制御信号を最適化することにより、この問題解決に取り組んでいます。

「従来は目標経路上のある1点のみを見ていましたが、私たちは経路全体を見ています。」

すべての人のために、より良い世界を目指して

全交通事故の90%はヒューマンエラーが原因という調査結果があります。つまり、道路上の人為的ミスをなくすことができれば、自動運転の普及により、世界中の交通事故による死者数が大幅に減少するのです。そして、事故が減れば渋滞が緩和され、排出ガスは減り、保険料も安くなります。

自動運転を実現する先端技術総合研究所の取り組みは、Automating the World - オートメーションで変えていく、私たちのスローガンを実践するものです。

製品・ソリューション紹介

ACサーボシステム MELSERVO-J5

ACサーボシステム MELSERVO-J5

生産設備のさらなる高速化・高精度化の実現に加え、次世代産業用オープンネットワーク「CC-Link IE TSN」に世界で初めて対応。エッジコンピューティングを活用した工場のIoT化に貢献するとともに、お客様のTCO(Total Cost of Ownership)削減に貢献します。

3Dシミュレータ MELSOFT Gemini

3Dシミュレータ MELSOFT Gemini

デジタル空間上でライン・装置を検証できる3Dシミュレータによって、事前検証を実現。
また設備の検証だけでなく人や物の動きを含めたレイアウト検証も3Dで実現可能です。
検証によって設計フェーズにおけるコスト・時間を大幅に削減できます。

データサイエンスツール “MELSOFT MaiLab”

人の「勘」や「経験」をデジタル技術に置き換え、制御システムへの組込みを簡単に実現。
モノづくりをさらに改善するデータサイエンスツールです。

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